若者がネオスナックを始める5つの理由|昭和レトロが生む新しい夜の文化
「なぜ若い世代が、あえてスナックを始めるの?」と気になる人もいるはず。この記事では、昭和レトロへの関心だけではない、若い店主がネオスナックを選ぶ理由を5つの視点から紹介します。
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Edit : スナッカーうめ
Graphic : yohei
この記事の概要
若者がネオスナックを始める背景には、昔の文化を自分らしく再編集できること、小さな店から始めやすいこと、店主の個性を生かせること、SNSとリアルをつなげられること、コミュニティを育てられることがある。
この記事のポイント
- 昔の文化を自分らしく再編集
- 小さな空間から店づくりできる
- 店主の個性が店の魅力になる
- SNSとリアルをつなげやすい
- 新しいコミュニティを育てられる
INDEX
ネオスナックは「昔の店を再現すること」ではない
ネオスナックとは、昔ながらのスナックが持つ会話やカウンター文化、人との距離の近さを残しながら、内装、音楽、SNS、イベントなどに現代的な感覚を取り入れた店を指す言葉として使われています。ただし、「ネオスナック」という公的な営業区分や統一された定義があるわけではありません。
近年は、若い世代が運営する新しいタイプのスナックもメディアで取り上げられています。全日本スナック連盟の玉袋筋太郎さんが登場する若者を惹きつける“ネオスナック”とは?でも、昔ながらのスナック文化を残しながら新しい客層とつながる店が紹介されています。
では、なぜ若い世代が既存のバーではなく、あえて「スナック」という形を選ぶのでしょうか。その背景には、昭和レトロへの興味だけではなく、小さな店だからこその自由さや、人がつながる場所を自分でつくれる面白さがあります。
理由① 昔の文化を自分らしく再編集できる
ネオスナックの面白さは、昔ながらのスナックをそのまま再現しなくてもいいところにあります。カウンター、ボトル棚、カラオケ、ママやマスターと客との会話といった文化を残しつつ、音楽や内装、ドリンク、接客スタイルを自分たちなりに組み替えられます。
昭和歌謡を流しながらクラフト系のドリンクを出してもいい。昔ながらの赤いスツールの横に現代アートを飾ってもいい。イベントの日だけDJを呼ぶ店があってもいい。「昔ながら」を守るか、「今っぽくする」かの二択ではなく、両方を混ぜられる余白があります。
スナックタイムズの「ネオスナック探訪シリーズ② 昭和レトロを再解釈した店内デザインの魅力」でも紹介しているように、ネオスナックのレトロ感は単なる懐古ではなく、現代の感覚で読み替えられているのが特徴です。
理由② 小さな店から始められる
スナックには、カウンターを中心とした比較的小さな店舗も多くあります。そのため、大規模な飲食店をつくる場合と比べれば、小さな空間から店づくりを始められるケースがあります。以前スナックだった居抜き物件なら、カウンターや棚など既存設備を活用できる場合もあります。
ただし、「スナックなら安く開業できる」と単純に考えるのは危険です。物件取得費、内装、厨房設備、カラオケ、防音、酒類、営業内容に応じた許可や届出など、必要な費用や手続きは店によって大きく変わります。
若い店主にとって魅力なのは、必ずしも「安さ」ではなく、大きな店舗を埋めなくても、自分の目が届く範囲から店をつくれることなのかもしれません。十数席ほどの空間でも、一人ひとりと話しながら、その店らしい夜を育てていけます。
理由③ 店主の個性を店そのものにできる
小さなスナックでは、店主の趣味や人柄が店の空気に反映されやすくなります。好きな音楽、酒、インテリア、話題、カラオケの選曲まで、その人らしさがそのまま店の特徴になります。
これは若い店主にとって大きな魅力です。既存の飲食業態の型に自分を合わせるのではなく、「自分ならどんな人と、どんな夜を過ごしたいか」から店を考えられるからです。
筆者はこれまで3,000軒以上のスナックを巡ってきましたが、記憶に残る店ほど「設備が豪華だった店」とは限りません。「このママだからこの店になる」「このマスターの選曲だからこの空気になる」という店が数多くあります。スナックでは、店主自身が最大のコンテンツになる。その構造は、自分の世界観を表現したい若い世代とも相性がいいと感じます。
理由④ SNSとリアルな店をつなげやすい
昔ながらのスナックは、紹介や口コミで客が増えていく店も多くありました。ネオスナックでは、そこにInstagramやXなどのSNSが加わります。
店内の雰囲気、ママやマスターの人柄、イベント情報、今日歌われた曲などを発信すれば、「スナックに興味はあるけれど、知らない店の扉を開けるのは怖い」という人にも店の空気を伝えられます。
ただし、SNSそのものがネオスナックの目的ではありません。大切なのは、SNS上でつながった人が実際のカウンターへ来て、今度は顔を合わせて会話を始めることです。オンラインで知り、オフラインで関係が育つ。この行き来ができるのは、現代のネオスナックならではの面白さです。
SNSとスナック文化の関係については、「SNS時代のネオスナック|発信がつなぐ新しい夜の文化」でも詳しく紹介しています。
理由⑤ 自分たちのコミュニティをつくれる
そして、若い世代がスナックという形を選ぶ理由として外せないのが、人がつながる場所をつくれることです。
スナックは、同じテーブルについた仲間だけで完結しにくい店です。カウンター越しに店主と話し、その話に隣の客が加わり、カラオケをきっかけに別の客とも会話が始まる。小さな空間だからこそ、知らない人同士がゆるく交わることがあります。
これはフォロワー数や「いいね」とは違うつながりです。職業も年齢も違う人が同じカウンターで話し、何度か通ううちに顔見知りになっていく。店主は酒を提供するだけでなく、その関係をつなぐ役割も担います。
「ネオスナックで生まれる交流とは?|世代も職業も越える夜のハブ」でも扱っているように、人との交流はネオスナックを考えるうえで重要な要素です。
自分の好きなものを並べた場所に人が集まり、そこで自分の知らなかった関係まで生まれていく。それは単に「飲食店を経営する」だけでは得にくい、スナックならではの店づくりの面白さです。
まとめ|ネオスナックは夜文化を自分たちの形で受け継ぐ
若い世代がネオスナックを始める背景には、昭和レトロへの興味だけではありません。既存のスナック文化を自分なりに再編集できること、小さな空間から店をつくれること、店主の個性をそのまま店へ反映できること、SNSとリアルな交流をつなげられること、そして自分たちのコミュニティを育てられることがあります。
大切なのは、昔のスナックを壊して新しくすることでも、そのまま保存することでもありません。
カウンターを挟んで人が話す。好きな曲を一緒に歌う。何度か会ううちに名前を覚える。そんな昔から続いてきたスナックの良さを残しながら、入口や見せ方を今の時代に合わせていく。
ネオスナックは、「昭和を懐かしむ店」というより、昔から続いてきた夜文化を次の世代が自分たちの言葉で続きを書いている場所なのかもしれません。
yohei /グラフィックデザイナー・スナック経営者
デザイナーとして日々、ロジックと直感の両方を大切にしつつ、使う人の体温が伝わるデザインを追求する。オフは釣りやキャンプ、スナック巡りや梯子酒で、基本ワイワイ過ごしている。