『スナックバス江』に学ぶシリーズ⑥ カラオケは笑いの国境なき言語
スナックのカラオケが人をつなぐ理由を、漫画『スナックバス江』から読み解きます。
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Edit & Photo : 梅ちゃん
カラオケはスナック文化の象徴
スナックに行くと、特別な合図がなくても自然とカラオケが始まります。誰かがマイクを手に取ると、歌の上手い下手に関係なく拍手が起こり、気づけば場の空気がひとつになります。『スナックバス江』でも、カラオケは単なる余興ではなく、人と人の距離を縮める装置として描かれています。完璧な歌よりも「その場を一緒に楽しもう」という姿勢が評価される点に、スナックならではの価値観が表れているのです。
勝負ではなく「共有」としてのカラオケ
一般的なカラオケでは点数や歌唱力が話題になりがちですが、スナックではそれがほとんど意味を持ちません。『スナックバス江』でも、音程を外した瞬間や妙な選曲が笑いに変わり、場が和むシーンが何度も描かれています。
筆者自身も、初めて行ったスナックで「この曲はあまる上手く歌えないから」と遠慮していたところ、ママに「下手なほうが盛り上がるから大丈夫」と背中を押され、恐る恐る歌った経験があります。結果は案の定グダグダでしたが、その瞬間に場が一気に笑いに包まれ、そこから自然と会話に混ざれるようになりました。スナックのカラオケは、勝ち負けではなく“一緒に笑うための共有体験”なのだと実感した出来事です。
笑いを生む選曲と「下手さ」の価値
スナックで盛り上がるかどうかを左右するのは、実は歌の技術よりも選曲です。昭和歌謡や誰もが知る定番曲は一体感を生み、世代差のある曲を選べば「その曲知ってる?」という会話が生まれます。また、音程を外したりリズムがズレたりすること自体が、スナックでは立派な笑いになります。
以前、常連さんが本気でバラードを歌いながらサビで完全に裏返ってしまい、本人は真剣なのに店内が大爆笑になったことがありました。ところが歌い終わると拍手喝采で、「今日一番よかったよ」と声が飛ぶ。失敗を失敗で終わらせず、笑いに変えてしまうのがスナックの強さなのです。
歌がつなぐ世代と記憶
スナックには幅広い世代が集まりますが、カラオケはその垣根を自然に越えていきます。年配の常連が歌う昭和歌謡に若い客が反応し、若い客の選曲に年配の人が興味を示す。『スナックバス江』でも、歌を通じて世代が交わる場面が印象的に描かれています。実際に筆者が通っているスナックでも、「あの時みんなで歌った曲」の話は何年経っても話題に上がります。上手かった歌よりも、笑った歌、空気が一体になった歌の方が、記憶に強く残るのです。
まとめ:笑いの国境なき言語としてのカラオケ
スナックのカラオケは、まさに笑いの国境なき言語です。『スナックバス江』が描くように、歌は人を評価するためのものではなく、笑いと一体感を共有するための道具。上手く歌う必要はなく、むしろ失敗すら歓迎される文化が、スナックを居心地の良い場所にしています。もしスナックでマイクを渡されたら、ぜひ完璧を目指さず、その場を楽しむ気持ちで歌ってみてください。その一曲が、忘れられない夜の始まりになるかも⁉
梅ちゃん/スナック経営者/スナック愛好家(スナッカー)/メディアライター
スナックをこよなく愛する梅ちゃん。これまでに巡ったスナックは1,000軒以上にのぼり、現在は自身でも一店を切り盛りするスナックの達人。 経営で培ったリアルな知見も武器に、スナック文化の奥深い魅力をわかりやすく伝えていきます。